企画屋明け暮れ噺
小屋長屋家守 / 小言幸兵衛さんに聞く「家守(ヤモリ)」稼業とは何ですか?
古典落語の長屋噺によく「大家」「家主」が出てきますが、
上方では「家守(ヤモリ)」と呼びます。
ところで「ヤモリ」と聞いたら、多くの人は爬虫類のそれかと思いますが、
落語「妾馬(めかうま)」に珍問答のくだりがあります。
裏長屋の連中が井戸替えをしている時に、侍がやって来る場面があります。
「ああ、ちと物をたずねたいが、この長屋に家守はおるか?」
「…へ?」
「いや、家守はおらんか?」
「え?やもり?…やもりはね、いまはいませんが、
日が暮れると、あの塀のところへでてまいります。」(笑)
(『興津要編「古典落語(続)」参照』)
改めて「家守」とは、江戸時代に不在地主や家持が家作(貸家)の所有者に代わって長屋の諸事を差配(管理)した職業のことで、単なる建物などの管理だけでなく店賃(家賃)や地代を確実に取り立てるための店子(借家人)の選定(落語「小言幸兵衛」には家守の借家人を吟味する実態が、実に見事に描かれています。)(『興津要編「古典落語」参照』)や仕事の斡旋など、また店賃を三カ月滞納すれば「店立て(立ち退き)」をさせたりと長屋全体の管理者として長屋の諸事に広く関わり、優秀な家守の下には多くの店子が集まり、活気がありました。
さて、家守の収入については、住む家が無料で、裏長屋の入口付近に住み、家持からの給金(管理費)、樽代(礼金)、その他雑収入もあり、特に近郷の百姓からの下肥代は経済的利点が大きかったようです。